こんにちは、みやかわデンタルクリニックの院長の宮川です!
先日、フライブルグ大学のカッチャ・ネルソン教授の講演会に参加してきました。歯科用インプラントの分野で世界的に評価の高い先生であり、現在のメジャーなインプラントの機械的特性について多くの研究をされている方です。
インプラントは人体に埋め込まれてから何十年も口腔内の過酷な環境下で使用される工業製品ですので、自分が使うインプラント(私はカムログです)の機械的特性や他社のインプラントとの比較データを知るのはとても重要な事です。
しかしインプラント治療を多くされているドクターでも自分が使ってるインプラントの特性についてはメーカーの説明書きくらいしか知らない場合が多く、中にはどのメーカーでも大して変わらないと仰るドクターも居ますが実際には各社かなり異なります。
今回のテーマは「インプラント治療におけるインプラントコネクションの精度とその臨床的影響」でした。非常に示唆に富んだ内容でしたので、その一部を紹介したいと思います。
〇インプラントコネクションの重要性〇
まず教授は、**歯科用インプラントの精度の根拠**について詳しく解説されました。特に「アバットメントのコネクション」と「締め付けトルク値」が補綴物の安定性に直結する点を強調されていました。コネクションとは顎の骨の中に埋め込まれるインプラント体と、歯の形を含む上部のパーツとの接合部位の形状を指します。
インプラント体と上部のパーツが直角の形状で支えられるものをバットジョイント、すり鉢状の形になっているものをコニカルジョイントと呼びます。
バットジョイントとコニカルジョイントの比較では、前者は歯肉の垂直的変化が起こりにくい一方、後者は着脱のたびに15〜144ミクロンのズレが生じる可能性があるとのことでした。さらに、**締結トルク値が高いほど適合性は高まる**と考えられる一方で、繰り返しの着脱による歯肉のレベルの低下も軽視できないと警鐘を鳴らされました。
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〇 生物学的幅径と軟組織の安定性〇
臨床に直結する重要なポイントとして、教授は**付着歯肉幅は2mm必要であり、骨と歯肉の厚みも2mm必要**と述べられました。これはインプラント周囲の長期安定に欠かせない条件であり、インプラント治療の設計段階から意識する必要があります。
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〇 インプラントトラブルの多様な原因〇
インプラント治療では、しばしばインプラント周囲炎が問題となりますが、教授は「その原因が細菌ではない場合もある」と強調されました。咬合に問題がある場合にも炎症は起こり得る一方、補綴のミスフィットがあっても必ずしも周囲炎を引き起こすわけではないという点は非常に興味深いものでした。また、**外科的なトラブル(造成骨の不良や喫煙の影響)**も大きなリスクファクターであることを再確認しました。
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〇 回転自由度と補綴精度の関係〇
印象的だったのは、**インプラントの回転自由度**についての説明です。近代インプラントの原型となるブローネマルクシステムは回転自由度は4度ですが、これに対して私の使うカムログは1.5度、ストローマンのボーンレベルは4.5度であり、**2度以下であれば精度の高い補綴物が作れる**とのことでした。
回転自由度がゼロであればインプラント自体が入らず、また60〜100ミクロンの隙間が理想的であるとされ、100ミクロンを超える場合は治具が必要になるとのことでした。この「回転安定性」の理解は、補綴設計に直結する知識だと実感しました。
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〇アバットメント着脱とマイクロギャップ〇
また、教授は**アバットメントの着脱回数が歯肉に与える影響**についても触れました。何度も着脱すると歯肉の垂直的変化が起こりやすく、コニカルジョイントでは特にその傾向が強いとのこと。さらに、アバットメントスクリューは3回を超えて使用してはならず、それ以上ではネジが伸び切ってしまうと注意されました。
さらに、**ゼロローディングでも50ミクロンのマイクロギャップは存在し、荷重をかけても変わらない**こと、そしてバットジョイントであってもマイクロギャップやマイクロムーブメントは避けられないことが示されました。こうした隙間による**圧迫力や牽引力が周囲骨に影響し、過度な力は塑性変形を起こす**可能性がある点は臨床家として肝に銘じる必要があると感じました。
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まとめ
今回のネルソン教授の講演を通して、インプラント治療は単に「埋入して補綴を行う」だけでなく、**精密工学的な理解と生物学的幅径の確保**が不可欠であることを改めて理解しました。締め付けトルクや回転自由度、マイクロギャップといったミクロ単位の精度が、長期間に大きな臨床的成果の差となって現れることを実感しました。
最後に
ネルソン教授の講演は個人的に大変興味深いため、機会があれば必ず行っていましたが、今回講演後の懇親会で先生に質問する機会があったので疑問点などを伺ったのですが、話の最後にあなたの顔は覚えていますと言われて驚きました。講演中にウトウトした瞬間もあったので危なかったです。
次回は10月2日に更新します!
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【監修者・執筆者/みやかわデンタルクリニック 院長 宮川宗久】
〜経歴〜
⚫︎1997年 東京歯科大学卒業
海上ビルデンタルクリニック(東京丸の内)勤務
⚫︎2002年 みやかわデンタルクリニック開設
・日本歯周病学会会員
・日本口腔インプラント学会会員
・日本審美歯科学会会員